2013年3月27日
真吾オジサンの雑感
不具なるこそよけれ。
今回の雑感は徒然草からの引用です。
第八十二段
「@羅の表紙は、A疾く損ずるがわびしき」
と人の言ひしに、B頓阿(とんな)が、
「羅はC上下(かみしも)はつれ、D螺鈿(らでん)の軸は貝落ちて後こし、いみじけれ」
と申し侍(はんべ)りしこそ、E心まさりして覚えしか。
F一部とある草子などの、G同じやうにもあらぬを見にくしといへど、H弘融僧都(こうゆうそうづ)が、
「物を必ずI一具に調へんとするは、Jつたなき者のする事なり。K不具(ふぐ)なるこそよけれ」
と言ひしも、いみじく覚えしなり。
「すべて、何も皆、L事のとゝのほりたるは、あしき事なり。
し残したるをMさて打ち置きたるは、面白く、生き延ぶるわざなり。
N内裏造らるゝにも、必ず、作り果てぬ所を残す事なり」
と、或人申し侍りしなり。
先賢(せんけん)の作れるO内外(ないげ)の文にも、P章段の欠けたる事のみこそ侍れ。
@ 草子や巻物の表紙の、閉じたり、巻き終ったりした時に、表となる部分を羅(薄い織物)で張って装飾したもの。
A すぐに破損するのが困ることだ。
B 俗名、二階堂貞宗。兼好の友人で、遁世者で、当時の代表的歌人。兼好・浄辧・慶運と共に二条派の四天王の一人に数えられた。
1372年没、八十四歳。家集『草庵集』、歌論に『井蛙抄』がある。
C 羅の表紙の上下が、使用するにつれてすり切れ、布地がほつれ。
D 貝の真珠光のある部分を切り取り、巻物の軸の両端にはめこんで装飾したもの。
E 思ったよりもまさって見上げたものだと感心したことである。
F 何冊かで一部にまとまっている草子(紙を重ねて綴じた本)。
G 同じ体裁でもないのをみっともないと世間では言うのだが。
H 仁和寺の僧。寂年未詳。
I 一そろいに。
J くだらない者。つまらぬ者。
K 不揃いなのが。
L 物事の完全に出来上がっているのは。
M そのままにさし置いてあるのは、興趣があって、その将来に生命の延びるのが期待されるやり方なのである。
未完成の状態にして置くことが、未完成なるが故に、将来に完成されるための生命の延長を感じさせるというのである。
N 里内裏(平安京内裏の外に、臨時に設けられた皇居)をご造営になる折にも。
O 仏教の側から見た場合、仏書を内典、儒教の書を外典というのによる。
P 章も段も、長大な文章中の大きなまとまり・段落。
こういうことだそうです。